さばき済みズワイガニ、問題はさばくことではなく時点です
前もってほぐしておいた身は、乾くにつれてきめと甘みを一緒に失います。注文後にさばく場合と前もってさばく場合の違い、皿の上で確認する四つのこと、ご家庭でご自分でなさるときの手順を書きました。

さばき済みズワイガニとは、あらかじめ殻を割って身を取り出しやすくして出すもののことです。ただし、いつさばいたかがすべてです。注文を受けてからさばいたものと、前もってさばいておいたものは、身のきめからして違います。
さばいたカニは良いものなのかとお尋ねになる方がいらっしゃいます。殻との格闘をしなくて済むので楽ではあるけれど、なにか損をしているような気がする、というのです。その感覚は、あながち間違いではありません。
さばき済みズワイガニで肝心なのは、さばくこと自体ではなく時点です。同じ作業でも、いつやったかによって皿に載るものがまったく変わります。これをご存じないと、便利さと品質を引き換えにしてしまうことになります。
25年間、毎日この作業をしてきましたから、その違いは手に残っています。どう違うのか、何を確認すればいいのか、書いておきます。
目次
- さばくという作業
- いつやったかがすべてです
- さばく手順
- 出てきた皿で確かめる方法
- さばく時点による違い
- 蒸してからさばくか、前にさばくか
- なぜ前もってさばいておく店があるのか
- 尋ねればいいこと
- ご自分でなさるとき
- 必要な道具
- 捨てなくてもいい部分
- 残ったらどうするか
- よくあるご質問

さばくという作業
「さばく」という言葉は広く使われます。どこまでがさばく作業なのか、まず整理しておきます。
一番の基本は、脚を胴から外すことです。その次が、脚の殻を縦に長く割って、身がそのまま抜けるようにする作業です。ここまでが、お客さんの手間を一番減らす段階です。
胴は半分に割って、仕切りごとに詰まった身が見えるようにします。こうすればスプーンでかき出して召し上がれます。丸ごと出すと、ここに詰まった身のほとんどを食べられないまま捨てることになります。
甲羅は別に外します。中にたまったカニ味噌がこぼれないよう、器のように受けて出すのが本筋です。ここにご飯を混ぜるのが最後の締めですから。
ハサミの部分は殻が硬いので、別に手をかけます。完全にむかずに、軽くひびだけ入れて出すこともあります。ほじって食べる楽しみを残しておく方を好まれる方がいらっしゃるからです。

いつやったかがすべてです
ここが核心です。同じさばき方でも、時点が違えばまったく別の品物になります。
まず、前もってさばいておいた場合を見てみましょう。身を殻から出しておくと、空気に触れる面が広くなります。すると表面が乾き始め、乾いた身はきめが固くなります。温め直しても、最初の状態には戻りません。
そして水分が抜けると、甘みも一緒に抜けます。カニの身の甘みは水気とともにあるもので、水気が乾けば味がぼやけます。これが「さばいたカニはおいしくない」という印象の正体です。
一方、注文を受けてからその場でさばくと、状況が変わります。身が熱いまま殻から出て、すぐに食卓へ上がります。乾く時間がないのです。
整理すると、さばくこと自体は問題ではありません。問題は、さばいてから食べるまでの間隔です。この間隔が短ければ、さばくことは純粋に便利さだけを残します。

さばく手順
実際にどんな順序でやるのか書いておきます。ご家庭でなさるときも同じです。
第一に、脚を胴から外します。関節の部分をつかんでひねるように引くと、きれいに外れます。無理に折ると、身が殻の中に残ります。
第二に、脚の殻を割ります。ハサミを殻の側面に入れ、節に沿って長く切ります。上下ではなく側面を切るのがコツです。そうすれば身が丸ごと抜けます。
第三に、胴を半分に割ります。甲羅を先に外してから、胴を縦に切ります。断面を見ると、仕切りごとに身が詰まっているのが分かります。
第四に、ハサミの部分を処理します。殻が硬いので力が要ります。包丁の背や道具でトンと叩いてひびを入れてから開けばいいのです。
第五に、甲羅を整えます。中にたまったカニ味噌をこぼさないよう気を付けて、エラのような食べない部分だけ取り除きます。
全体で数分あれば終わります。長く触っていると身が崩れやすくなるので、速いほど良いのです。

出てきた皿で確かめる方法
自分の前に来たカニがいつさばかれたものか分かるのか、と聞かれれば、分かります。いくつか見るだけで結構です。
第一に、身の表面です。殻から出たばかりの身は、表面がしっとりして艶があります。時間が経った身は表面が少し乾いて、きめがぼそぼそして見えます。
第二に、湯気が上がっているか見てください。その場でさばいて出したものは、皿に盛られた状態でも湯気が立ちます。前もって用意したものを温めた場合は、外だけ熱くて中がぬるいことが多いのです。
第三に、身が殻からどう外れているか見てください。丸ごと抜けた身は、節の形がそのまま残っています。崩れたかけらが多ければ、熱が抜けた状態でほじったということです。
第四に、甲羅にたまったカニ味噌の状態です。出来たてのものは味噌が流れるようにたまっていて、時間が経つと固まって縁が乾いてきます。
さばく時点による違い
ここまでの内容を表にまとめました。
| 項目 | 注文後にさばく | 前もってさばく |
|---|---|---|
| 身の表面 | しっとりして艶がある | 乾いてぼそぼそする |
| きめ | やわらかくほぐれる | 固くなる |
| 甘み | 水気とともに残っている | 水分とともに抜ける |
| 温度 | 中まで均一に熱い | 外だけ熱いことがある |
| 待ち時間 | 時間がかかる | 早く出てくる |
表をご覧になれば分かるとおり、前もってさばく方式が勝るのは速さひとつです。その速さを買われるのなら合理的な選択ですし、そうでなければ待たれる方が良いのです。

蒸してからさばくか、前にさばくか
順序の問題もあります。これは結果をかなり変えます。
基本は、丸ごと蒸して出してからさばくことです。殻が身を包んだまま火が通ると、水分が中に閉じ込められます。だから身がしっとり蒸し上がるのです。
逆に、さばいて身を出した状態で蒸すと、水分がそのまま飛んでしまいます。身が縮んでぱさぱさになります。時間は縮まりますが、得るものがありません。
それから、蒸すときの姿勢もあります。腹が上になるようひっくり返して入れなければなりません。背を下にすると、甲羅にたまったカニ味噌が脚の方へ流れ出て、最後にご飯を混ぜる分が減ってしまいます。
このふたつを守る店は、ほかのことも手を抜きません。逆にこれを守らなければ、良い品物を仕入れておきながら、ここで台無しにしているようなものです。

ご自分でなさるとき
さばき済みのカニを買って帰るのではなく、ご家庭でご自分でなさる方のために、いくつかだけ書き足しておきます。
まず手袋をはめてください。殻のトゲは思ったより鋭いのです。軍手の上にゴム手袋を重ねれば、手も熱くならず滑りもしません。
次に、熱いうちにやってください。冷めると身が殻に張り付いて、なかなか外れません。熱くて手がつけられなければ、手袋を二重にはめればいいのです。
ハサミは殻の側面に入れてください。上下を切ると身まで切れてしまいます。側面に沿って長く切り、殻を開けば身が丸ごと出てきます。
そして、一度に全部ほぐしてしまわないでください。召し上がる分だけほぐしながら食べる方が良いのです。ほぐしておいた身は、置くほど乾きます。
必要な道具
大げさなものは要りません。家にあるもので足ります。
台所のハサミがひとつあれば、ほとんど済みます。刃の厚いものが良いです。薄いハサミは殻の上で滑ります。
カニのハサミ用に硬い道具がひとつあると便利です。包丁の背でもいいですし、ニンニクをつぶす道具でも構いません。強く叩く必要はなく、ひびさえ入れば開きます。
スプーンは胴の身をかき出すときに使います。小さなティースプーンが仕切りの間によく入ります。
器はふたつ置いてください。ひとつは身、ひとつは殻です。混ざると、あとで選り分けるのに時間を取られます。

捨てなくてもいい部分
さばきながら捨てているもののうち、捨てなくてもいいものがあります。
一番もったいないのは殻です。ここから出汁が出ます。水に入れて煮出せば、塩気より甘みが先に立ち、あと口のきれいな出汁になります。ラーメンに使ってもいいですし、テンジャンチゲに入れても構いません。
脚の節の中にも身が残ります。割ったあとに節の中を一度さらってみると、思ったよりたくさん出てきます。箸の先で押し出せばいいのです。
甲羅にたまったカニ味噌は言うまでもありません。ここにご飯と刻み海苔を入れて混ぜれば、一食が締めくくられます。ごま油を少し入れると良いです。
逆に、エラは召し上がりません。胴の両脇に付いた灰色の櫛の歯のような部分です。さばくときに取り除けば済みます。

うちのやり方
うちは注文を受けてから水槽から出します。前もってさばいておくことはしません。だから、座ってすぐには出てきません。
丸ごと蒸して火を通してからさばきます。腹を上にして蒸します。さばくのは手早く終わらせます。長く触ると身が崩れやすくなりますから。
胴は割ってお出しします。スプーンでかき出して召し上がってください。丸ごと出すと、ここに詰まった身のほとんどを食べられないまま捨てることになるからです。
残った殻は出汁に使います。紅ズワイガニのラーメンとテンジャンチゲに入り、甲羅にはご飯を混ぜます。一杯のカニが最後まで使われるのです。

なぜ前もってさばいておく店があるのか
さばき済みのカニを前もって作っておくのにも理由があります。その店が怠けているからだけではありません。
一番大きな理由は回転です。お客さんが押し寄せる時間に一杯ずつさばいていては、時間が合いません。席を長く空けておけない仕組みの店なら、前もって用意しておく方を選ぶことになります。
人手の問題もあります。さばくのは慣れた人がやってこそ速いのです。その人がひとりしかいなければ、注文が重なったときにボトルネックが生まれます。だから暇なうちに前もってやっておくわけです。
それからお客さんの期待もひと役買っています。座ってすぐ料理が出てくることを望まれる方がいらっしゃいます。十五分待ってくださいと言うと、不満に思われる場合が実際にあるのです。
ですから、前もってさばくことが一概に悪いわけではなく、何を優先するかの問題です。ただ、お客さんの側には、どちらなのか知ったうえで選ぶ権利があります。尋ねればいいのです。
尋ねればいいこと
さばき済みのカニを前にして確認していただきたいことをまとめます。難しくありません。
「今からさばくんですか」が一番目です。この質問にすぐ答えが返ってくる店なら大丈夫です。言葉を濁したり話をそらしたりすれば、それ自体が答えです。
「どれくらいかかりますか」が二番目です。注文後にさばく店は時間を言ってくれます。十五分から二十分程度なら正常です。五分以内に出ると言われたら、前もって用意してあったものです。
「胴も割ってもらえますか」が三番目です。胴を丸ごと出されると、中に詰まった身のほとんどを食べられません。割って出しますと言う店が、お客さんのことを考えている店です。
「殻で出汁を取ってもらえますか」が最後です。残った殻を使う店は、一杯を最後まで使う店です。それだけ品物を大事に思っているという意味でもあります。
よくあるご質問
さばき済みズワイガニとは何ですか?
あらかじめ殻を割って、身を取り出しやすくして出すもののことです。脚の殻を側面から縦に長く切り、胴を半分に割って仕切りごとに詰まった身が見えるようにする作業です。
さばくと味が落ちますか?
さばくこと自体ではなく、時点が問題です。前もってさばいておくと身が空気に触れて乾き、乾くときめが固くなって甘みも一緒に抜けます。注文を受けてからその場でさばけば、乾く時間がないので問題ありません。
いつさばかれたものか分かりますか?
身の表面がしっとりしているか、皿から湯気が上がっているか、身が丸ごと抜けているか、甲羅のカニ味噌が流れるようにたまっているかを見てください。四つが重なれば、さばきたてです。
蒸す前にさばいてはいけませんか?
おすすめしません。殻が身を包んだまま火が通ってこそ、水分が中に閉じ込められます。身を出した状態で蒸すと水分が飛んで、縮んでぱさぱさになります。
家でやるには何が必要ですか?
刃の厚い台所のハサミがひとつあれば、ほとんど済みます。カニのハサミ用に包丁の背のような硬い道具、胴の身をかき出す小さなスプーンがあると便利です。器は身用と殻用のふたつを置いてください。
ハサミはどこに入れればいいですか?
殻の側面です。上下を切ると身まで切れます。側面を節に沿って長く切り、殻を開けば身が丸ごと出てきます。
冷めてからほぐしてもいいですか?
冷めると身が殻に張り付いて、なかなか外れません。熱いうちになさる方がずっと楽です。手が熱ければ、軍手の上にゴム手袋を重ねてください。
先に全部ほぐしておいてもいいですか?
召し上がる分だけほぐしながら食べる方が良いです。ほぐしておいた身は、置くほど乾きます。一度に全部ほぐすと、あとで召し上がる分が固くなります。
前もってさばいておく店はなぜそうするのですか?
回転と人手の問題です。お客さんが押し寄せる時間に一杯ずつさばくと時間が合わず、慣れた人がひとりしかいなければボトルネックが生まれます。一概に悪いのではなく、何を優先するかの問題です。
注文後にさばくと、どれくらいかかりますか?
十五分から二十分程度なら正常です。五分以内に出ると言われたら、前もって用意したものを温めたのです。先に出る副菜を召し上がりながらお待ちください。
殻は捨てますか?
捨てないでください。水に入れて煮出せば出汁が出ます。塩気より甘みが先に立ち、あと口がきれいです。ラーメンやテンジャンチゲにお使いください。
食べない部分はありますか?
エラは召し上がりません。胴の両脇に付いた灰色の櫛の歯のような部分です。さばくときに取り除けば済みます。それ以外は、脚の節の中までさらえば、思ったよりたくさん身が出てきます。
残ったらどうするか
食べきれずに残る場合があります。そのときどうするかも書いておきます。
まず、身と殻を分けて置いてください。殻に付いたままにすると、身が殻にいっそう張り付いて、あとで外せなくなります。
そして、乾かないように覆っておいてください。カニの身は空気に触れると早く乾きます。密閉容器がなければ、器に盛ってラップをかけても構いません。
もう一度召し上がるときは、温め直すより別の料理に入れる方が良いです。温めると、すでに乾いた身がさらに乾きます。チャーハンに入れたり汁物に入れたりすれば、きめの固さが気になりにくくなります。
ただ正直に申し上げれば、カニはその場で食べきるのが一番です。残りそうなら、最初から重さを少なめにしておく方が良いのです。足りなければ追加すればいいのですから。
まとめ
さばき済みズワイガニで大事なのは、さばいたかどうかではなく、いつさばいたかです。その間隔が短ければ便利さだけが残り、長ければきめと甘みを一緒に失います。皿を受け取ったら、身の表面と湯気、そして甲羅のカニ味噌をご覧ください。
うちは機張市場の中にあります。屋号は機張チョンヘワンデゲ、住所は釜山広域市機張郡機張邑邑内路104番キル12、電話は0507-1490-5702です。毎日朝九時から夜九時まで開けています。
選ぶときに何を見るかは水槽から見る見分け方に書いてあります。

鄭永鎮
機張清海王ズワイガニ · 店主 · 25年の活魚商人